2015年4月9日

4つの層で考える戦略的で柔軟なまちづくり・むらづくり(第3回)

前回について

第2回では,戦略的で柔軟なまちづくりの第2層,すなわち,価値観に基づいて将来像を選択する層について説明した(こちら)。なお,第1層は,将来像の選択に関する価値観を顕在化させる層である(こちら)。

第3層:実現性に基づいて手段を選択する層

第3層は,実現性が支配する層であり,第2層から受け取った将来像の一つ一つについて,「複数」の手段を選択し,とりあえずの優先順位を決める層である。第2層と比較した場合,主観が入る余地が小さいため,研究者やコンピューター・シミュレーションなどの活躍も期待できる。手段ごとの詳細な手順については,後述の第4層に任せる。

将来像の一つ一つについて,次の(1)~(4)を行うことを推奨する。(1)手段の候補を複数準備する。山間地の小集落の維持であれば,農業の振興,裕福な年金生活者を呼び込むことなどがあげられる。それらの複合型も考えられる。(2)それぞれの候補について,必要となる資源,すなわち,労力,土地,資金などを試算する。情報収集のため,小規模な実験を行ってもよい。(3)現場を精査しながら,手段の候補の「足切り」を行う。すなわち,合意形成が不可能と判断されたもの,必要な資源が確保できないと判断されたものなどを却下する。ここでは,別の手段が挫折したあとに実行される可能性も考慮すべきである。つまり,投入可能な資源は少し低めにみたほうがよい。(4)採用された手段について,とりあえずの優先順位を決める。基本的には,必要となる資源が少ないほど,優先順位が高くなる。

ある将来像について,手段が一つも選択できなかった場合,つまり,実現不可能な場合,その将来像自体が却下される。つまり,第3層は,実現性に基づいて将来像の妥当性を点検する層でもある。実現性に基づく「判断」によって,将来像の数がゼロになった場合,つまり,八方ふさがりになった場合は,まちづくり自体を中止するか,モデル的自治単位を再編成し,はじめからやり直す。「中止」といえば聞こえがわるいかもしれないが,「成り行きに任せる」という「選択」も尊重されるべきものである。

次の層は「実行する層」である。実行中の混乱を防ぐため,当事者全員の合意をていねいに確認することが求められる。合意のない強制的なまちづくりは厳禁である。この時点での全体像を図1に示す。

図1_この時点での全体像
図1 この時点での全体像(将来像や手段の個数は一例)

第3層の要点を記す。(1)将来像の一つ一つについて,いくつかの手段を選択し,優先順位を決める。(2)実現不可能な将来像は却下する。(3)当事者全員の合意をていねいに確認する。

第4層:手段を精緻化して実行する層

第4層は,手段を精緻化して実行する層である。精緻化で最も重要なことは,「このような事態に陥ったら,別の手段を導入するための議論をはじめる」の「このような事態」を明確にしておくことである。資源には限りがあるため,無理のあるものに惰性でしがみつくような事態は回避しなければならない。将来像の変更についても,しっかり考えておく必要がある。

全面的な実施となれば,PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)が活躍することになるであろう。無論,要所では合意形成が求められる。機械的に進めることは許されない。ここでは,最後になってはじめてPDCAサイクルが登場したことを強調しておきたい。明文化された価値観も,具体的な将来像もない状態では,活動のよしあしを判断すること(Check)ができない。第1層や第2層を省略し,いきなりPDCAサイクルに入ることは避けるべきである。

次回は,第1回~第3回で紹介したモデルを振り返りながら,現実の「問題」を浮き彫りにする。

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投稿日時
2015年4月09日 16:29
カテゴリ
論説
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