- 2014年6月6日
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4つの層で考える戦略的で柔軟なまちづくり・むらづくり(第2回)
前回について
第1回では,戦略的で柔軟なまちづくりの第1層,すなわち,将来像の選択に関する価値観を顕在化させる層について説明した(こちら)。
第2層:価値観に基づいて将来像を選択する層
第2層は,当事者全体の価値観が支配する層であり,将来像についての「複数」の具体的な候補から,望ましいと感じるものを「いくつか」選択し,優先順位を決める層である。外部から期待されている役割もある程度意識しなければならない。住民の四散が危惧されるような山間地の小集落であれば,「現状そのまま(第1希望),それが難しいなら,場所を変えて集落を再建する(第2希望)」といったものが考えられる。ただし,それは「地縁が守られることをよしとする」という価値観を持っている場合の一例にすぎない。
第2層の基本は単純であり,たとえば,大学入試で第1志望,第2志望,第3志望を設定することと大差はない。変化が激しい時代では,それに対応できるよう,可能なかぎり多くの将来像を設定することが強く求められる。考え方としては,運にある程度左右される大学入試で,複数の志望校を設定することと同じである。
モデル的な進め方は,次のとおりである。(1)民主的な手順で,まちづくりの対象の時間的・空間的な範囲を設定する。(2)期末の将来像についての具体的な候補を複数準備し,それぞれについて,当事者でイメージを共有する。ここでの「具体的な」とは,どの程度実現できたかが判断できるような,という意味である。(3)民主的な手順で「望ましいと感じるもの」をいくつか選択し,優先順位を決める。なお,地域全体が衰退している場合,第1希望は,「現状そのまま+少々の何か」になる可能性が高い。
第2層は,集落のリーダーや市町村であれば議員が活躍すべき層であり,研究者にできることは,(2)の支援だけである。外部の支援者は,将来像の候補に関する青写真を提供することが可能であるが,良否の判断には介入できない。
短くなったが,第2回は,ここまでとしたい。最後に,この時点の全体像(図1)と第2層の要点を記す。(1)望ましいと感じる将来像をいくつか選択し,優先順位を決める。(2)外部の支援者は,将来像の候補に関する青写真を提供することが可能であるが,良否の判断には介入できない。